第21回医薬品等ウイルス安全性シンポジウム 各演題への質問と回答
なお、実際にいただいた質問について回答を研究会にてとりまとめ、Q&A形式にアレンジしたものとなりますので、ご了承ください。
演題2 「何故、遅れた日本の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの開発」
Q1:(演題2への質問)
現在のCOVID-19のワクチンは、粘膜免疫を誘導できないと思うが、粘膜防御に関するワクチンの研究は進んでいるのか?
A1:
今のところアカゲザルの実験レベルで、チンパンジーアデノウイルスベクターを用いた新型コロナウイルスベクターワクチンとDNAワクチンの経鼻接種での研究があります。ヒトでの臨床試験はこれからになると思われます。
Q2:(演題2への質問)
ウイルスベクター型のワクチンが開発された場合、アデノウイルスの共感染により、ワクチンベクターと野生ウイルスに相同組換えが起こり、プロモーターが暴走する危険性はないか?
A2:
相互組換えの可能性はあると思いますが、現実面としては極めて低いと思います。
ベクターワクチンは接種後に、生体内では感染しても増殖はしないので、接種後に
細胞内に存在するのは数日間だと考えられ、その期間での重複感染の機会は限定されます。ワクチンベクターベースでの組換えが起こってもできるのは single round のウイルスになります。野生株ベースでの相互組換えでも病原性がそれ以上強くなり、よく増えるウイルスになるとは考えにくいと思います。
演題4 「バイオ医薬品のウイルス安全性評価国際ガイドライン(ICH Q5A)の改定作業の現状と方向について」
Q3:(演題4への質問)
Q5A(R2)の中で、核酸増幅などの試験法について条件付きで示されるでしょうか?
A3:
核酸増幅法やNGS(次世代シーケンサー)などの分子測定法(molecular methods)をin vivo試験やHAP/MAP/RAP抗体産生試験の代替とすることができるということは示される方向で議論されていますが、代替として用いられ分子測定法の妥当性については「規制当局と相談すること」のレベルで、具体的な要件やプロトコール等はまだ明らかになっていません。
Q4:(演題4への質問)
Q5A Ⅲ.A.に記載されているCAL(Cells at the Limit)の取得方法にはガイドライン等に作成方法の指示がありません。
参考資料があれば教えてください。End of Productionの細胞を、スケールダウンしてCALまで培養した場合、内在性ウイルスが発現しにくくなるなどのマイナス側の影響は考えられるでしょうか?
A4:
CAL(Cells at the Limit)の作成方法について示した公的な資料はないと思います。
スケールダウンによって、実際の製造と較べてウイルス増殖にマイナス影響が発生することはあり得ますが、具体的なリスクとして示された資料はないので、ケースバイケースで考えることになると思われます。
演題5 「再生医療の微生物安全性試験」
Q5:(演題5への質問)
ドナーの選択基準にあるB19の意味を教えてください。
A5:
ヒトパルボウイルスB19(Human parvovirus B19)です。"B19"は実験に用いた番号に由来するものです。